WAIMARAMA

interview 03

今までに味わった
最高のワイン

サンテミリオンのシャトー・シュヴァル・ブランとシャトー・オーゾンヌの1989年。この対比はとても興味深いものがありました。ふたつともサンテミリオンの格付けにおけるトップ中のトップです。同等に有名で高価なワインですが、飲んでみるとまったく違うものでした。シュヴァル・ブランは香り高くエレガントな味わいで、すぐに美味しく味わえました。一方のオーゾンヌは、開けたばかりの時点では閉じ気味でしたが、30分経ったら爆発的に開いたのです。複雑なフレーバーと緻密な味わいに私はすっかり魅了されました。
このふたつのシャトーは同じアペラシオン(産地呼称)を持ちながら、土壌、品種、それに造る人が異なります。シュヴァル・ブランは砂礫質土壌なのでカベルネ・フランが優勢ですし、オーゾンヌは粘土石灰質土壌でメルロの特徴がよく出ます。
ここがワイン造りの面白いところで、土壌を見極め最適なブドウ品種を育ててあげることから、素晴らしいワインが生まれるのです。それを判断するのは人であり、そこから最大限のポテンシャルを引き出し、最高のワインに仕上げるのも結局は人の仕事です。

ニュージーランドの
ワイン造り

ニュージーランドでのコンサルティングは私にとって初めてなので、とてもエキサイティングです。
ニュージーランドのワインはピュアなアロマのソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールが世界的に認知されていますが、ここホークス・ベイではボルドー系品種のほか、シラーにも高いポテンシャルが感じられます。
ワイマラマとコンサルティング契約を結んでから送っていただいた資料をもとに、現状の分析と改善案をレポートしました。また初ヴィンテージの収穫まで4回、ブドウの生育上重要なタイミングで現地に赴き、ブドウ畑での作業を監督しました。
ブドウ畑の規模はボルドーの大シャトーと比べると小さなものですが、斜面の向きや土壌の構成が異なります。区画を特徴に合わせて分類し、整理しました。
ニュージーランドのワインは豊かなアロマをもっていますが、ボディの厚みやストラクチャーに欠けるものが多いと感じています。ワイマラマのワインはすでにかなりのレベルですが、さらにブドウの選別を入念に行い、ワインのストラクチャーを改善していけば、世界のトップ10入りも夢ではありません。最終的にはこの土地のテロワールを引き出した、偉大なワインに仕上げたいですね。

フランスのボルドーと
ニュージーランドのホークス・ベイとの違い

フランスのボルドー地方は大西洋に面した海洋性気候です。冬でも厳しい寒さにならず、夏もアフリカほどの暑さにはなりません。もっとも地球温暖化の影響で、最近は酷暑の年もありますが……。それから、ジロンド川、ガロンヌ川、ドルドーニュ川といった河川が、気温の調整役を務めてくれます。一年を通して穏やかな気候といえるでしょう。
大西洋から来る湿った風はランドの森でせき止められますが、それでも年間1000ミリほどの降雨量があります。
土壌は砂利、砂、粘土石灰などの組み合わせです。砂利質のメドック地区はカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適していますが、粘土石灰質のサンテミリオンはメルロ、カベルネ・フランに向いています。このようにボルドーの土壌は多岐にわたり、長年の経験と知識からその土地に最適なブドウ品種を植えるようになりました。これがすなわちテロワールです。
一方、ワイマラマのあるホークス・ベイは、ヤシの木やユーカリの木が生えていることからわかるように、温暖で乾燥した地中海性気候です。雨が少なく乾燥した年には灌漑設備が必要となってきます。
また土壌についてお話しすると、ホークス・ベイは一般的に沖積土で、これがボルドー系品種に適していると言われる理由です。ところがワイマラマの一部にはシルトを含む固い地層があり、ブドウの根が張りにくい構造になっています。このシルトの地層を砕いて、ブドウの根がより深い地層まで届くように、土壌を改良しているところです。
Profile
醸造家 / WinemakerLudwig Vanneronルドウィッグ・ヴァネロン

ボルドー大学を卒業後、1998年にミシェル・ローランの下で、醸造家としてのキャリアをスタート。その後、仏ベルジュッラク地区の名門シャトーの総責任者を経て、2011年に独立。ブドウの栽培&ワイン醸造のコンサルタントとして活躍中。